「森の駅発」メルマガ 第91号 2017 January
★ 2017年 新年号 巻頭言
変化の時代に対応する森の駅ネットワークの構築
…森林哲学を基礎として文化力を活かす… 小澤 普照
★ メルマガ連載
山小屋通信–27 「ウッドデッキ生活」 大森 明
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変化の時代に対応する森の駅ネットワークの構築
…森林哲学を基礎として文化力を活かす… 小澤 普照
新年を迎え皆様、諸活動でお忙しいことと思います。
ところで今年は変化の年であると想定する人が多いようです。
「森林」をめぐる諸状況にも、予測しにくい変化が生じる可能性も有り得ます。
また誤りのない活動を持続するためには、軸足の置き場所が大切であります。
そのような時にあたり、森を核として地域の活性化を図り、
森の恵み享受するためには、しっかりしたネットワークの構築が必要です。
つまり、時代に相応しい森林哲学が必要になります。
「哲学」という言葉が苦手だという方は、
「文化論」という事でお考え頂ければと思います。
森林文化論で著書も多い筒井迪夫(迪の字は正しくはシンニョウに点が二つ付きます)先生は、
「山と木と人の融合」が森林文化であるといわれました。(注1)
哲学であれ、文化論であれ、思考力を深めるために重要です。
我が国では、しばしば、山と森は同義語として用いられることがありますので
「山と木と人の融合」は「森と木と人」の融合と読み換えることも可能でしょう。
昭和40年代の末期から昭和50年代の初めにかけて筒井先生を囲んで、
筆者らが森林文化とは何かについて論じたことが思い出されます。
その後、森林文化活動の団体が設立されたり活動が行われたりする様になりました。
さらに林野庁が、森林文化を特集した「林業白書」(平成6年度版)を発行したのが、
平成7年4月ということになりますが、この白書では「森林文化の本質」は、
森林と人類の「共生」関係や森林に内在する「循環」原理に根ざしたものである
としています。
森林を構成する樹木は、人間の「寿命を遥かに超える生命力を持っていたため、
かつての人生50年の時代を考えれば、樹木と人間の相対寿命の差は大きく、
樹木を恐れ敬うという信仰の対象でもありました。
しかし、人間の欲望は限りがなく森林を荒廃させることもしばしばで、
法規制等により森林を保護することが必要になって参ります。
世界にかなり広く浸透しているものに、
類似の制度を含め「保安林」という制度があります。
保安林の種類は国によって異なりますが、
わが国は水源涵養保安林ほか17種類を数え種類は多い方に属します。(注2)
一方、わが国より森林法の制定が古い欧州諸国では、
保安林(保全林という訳語をあてるべきとの学識者の意見もあります)の設定も古いわけですが、
種類については土砂流出や雪崩防止などのいわゆる災害防止型に限定していたり、
保健や風致林は別のカテゴリーに入れている国もあり、また世界を見渡せば
近代になって制度化した国では種類が多いという傾向があります。
保安林のように文化性や地域性なども盛り込んだ森林の役割についての認識を
深めるとともに、さらに近年各地域に浸透しつつある「森林認証」などのほか、
この10年間で森を守り育てる活動拠点を40個所も発足させ、
外国からも評価されている「京都モデルフォレスト運動」等も参考にしていただき、
軸足がしっかりした森林活性化のネットワークを確立し、
発展させることに関係者の皆様が邁進されるよう祈って止みません。
(注1)出典、昭和51年発行『社会開発と林業財政』(筒井迪夫編著、筆者も共同執筆者の一人)
の中での森林文化の定義。
(注2) わが国の保安林の種類 水源涵養保安林(以下保安林を略す)、土砂流出防備、
土砂崩壊防備、飛砂防備、風害防備、水害防備、潮害防備、干害防備、防雪、防霧、
なだれ防止、落石防止、防火、魚つき、航行目標、保健、風致の17種。
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山小屋通信–26「ウッドデッキ」大森 明
山小屋の工房生活ではウッドデッキが有益だ。
山小屋を建てる時、アウトドア雑誌によく載っているウッドデッキベランダも造った。
南傾斜面なので高床式になった。
時期が阪神淡路大地震の直後だったためもあり、
ベランダの基礎と柱を大工さんに強固に作って貰い、梁とデッキ部分は自分で作った。
サラリーマンの方には参考になると思うが、とにかく土日の施工で時間が限られる為、
下界の自宅で木を寸法に刻み、防腐剤を塗って干して乾かしておく。
乾いたら車に積んで運び、山小屋で取付け工事となる。
この“仕掛品運搬作戦”により、現地作業効率は良かったが、
難点は防腐剤が乾いたばかりのデッキ材をワンボックス車に詰め込み、
3時間かけ運送した時の車内環境・空気の劣悪さ。
防腐剤の成分により、高速道では目がチカチカ、鼻がムズムズ、大変だった。
だが、こうして出来たウッドデッキは、
山小屋の工房にとって欠かせない「高機能スペース」になった。
山小屋を設計した時点でのウッドデッキの用途は、
デッキチェアでくつろぐか、洗濯物を干すくらいしか想定していなかった。
つまり下界の都市住宅のベランダ、バルコニー、テラス程度の期待感であった。
しかし、造ってみると洗濯物や布団干し機能は勿論、
デッキチェアに掛け風呂上りに一杯やりながら夕日を眺める“命の洗濯”機能、
木工作品(ガラクタではない!)の製作場、雨天時の燻製作りスペース、
音楽演奏ステージ、大の字昼寝スペース等々、大活躍している。
構造的にも、木工作品製作時に出るノコギリ屑・カンナ屑が、
すのこ状に敷いたウッドデッキの隙間から、パラパラと地面に落ちて掃除が楽だ。
また標高が高くて蚊がいないので、昼寝もグッスリ、
木工作業も夕方まで安心してできる、
非常に付加価値の高い「高機能スペース」になった。
さらに以前このメルマガでも報告済だが、当方下山後の留守中には、
猿軍団が遊び場として大いに活用なさっているとも聞いている。
つまり山奥の「公共・多目的スペース」として、
先住民たちにも活用されていると言える。
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