「森の駅発」メルマガ 第85号
• 第24回森の駅発市民フォーラム報告(講演後の質疑応答の一部)
テーマ:国産材利用の現状と今後の展開方向
• 天然の木材による住まいは「健康の泉」と当会の活動紹介
*好評連載中の山小屋通信はお休み致しますが、また次号から再開致します。ご期待下さい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
第24回森の駅発市民フォーラム報告(講演後の質疑応答の一部)
日 時:2016年6月2日(木)
会 場:ベニーレ・ベニーレ
講 師:小島孝文氏(林野庁 木材産業課課長)
テーマ:国産材利用の現状と今後の展開方向
林野庁小島課長の講演「国産材利用の現状と今後の展開方向について」を83、84号で報告
しましたが、続く質疑応答から岡本当会代表幹事の質問と小島氏の応答をお届け致します。
質疑応答
Q.健康住宅研究会の活動についてどう思われますか?(森の駅推進協議会代表幹事 岡本)
A.無垢材は原木の元玉部分のA材から取れるので、無垢材の需要を高めることは森林所有者
利益還元の点からは非常に重要で、無垢材による家作りを目的とする活動は有難い。
昨今の大壁作りの住宅は、柱・梁が総て内・外壁の内側に入り、そこには構造強度のみが
求められるが、真壁構造では柱の節の有無、敷居、鴨居の木目の良い材が求められます。
そのための良質な無垢材は高価格で取引されるので、無垢材の家作りは木材産業にとって
重要な応援となります。
また、学校の木質化については、先程、母親を味方に付けたいというお考えを聴きました。
私達もまた、何においても母親・奥さんを味方にするのは重要、と感じています。
内装の木質化は、
①木材の調湿機能効果でインフルエンザでの学級閉鎖が減るとか、
②木材の蓄熱効果で前週の金曜日の暖房熱が残っていて月曜日に温もりを感じ、朝の暖房の
熱消費量が少なくて済み省エネであるとか、
③新建材の部屋と木質化した部屋とでの大学生による単純計算作業の効率比較実験で木質化
した部屋の方は誤解答が少なく作業効率が良いなど、
様々な科学的データ、エビデンスを収集し、木材の需要開発を進めて行くことが重要です。
(木材生産課課長 小島)
Q.天然乾燥した良材の使用を可能にする、木材買付制度があります。そのために中央農林金庫
などによる、資金を蓄積できる金融システムが必要と思われますが、如何でしょう?(岡本)
A.公共建築物については、単年度予算のために天然乾燥などにこだわった木材を集められない
という話もありますが、市町村長、都道府県知事が決められる「材工分離発注方式」があり、
その方式を利用して、こだわりのある木造の学校建築を実現したところもあります。
競争入札が一般的ですから、会計からは、なぜ木材だけそうするのか、と抵抗はありますが、
首長が、木を使うのでこのやり方でやる、とひとこと言えばこの問題は解決できるのです。
その他にも、基金方式という予算の取り方があります。
複数年度の中で会計処理できるので、年度をまたいで事業を行えます。
ただ、その方式は限られてきていて、資金をプールして無駄遣いだと、政治家の先生から、
チェックを入れられることもありますが、柔軟性を持たせた執行方法として、使えることも
ありますので、ご相談頂きたいと思います。
「材に対して要求すると集まらない、高価になる」という話がありました。木材というのは
そう言うものだというのがこれまでの木材業者の話でしたが、そんなことを言っていたら、
木材など使ってもらえない。だから、在庫をしっかりやってゆく必要がある。原木、丸太、
半製品、最終製品どれで在庫するのか、そうした仕組みは林野庁も考えているところです。
資金にゆとりのある大会社であれば、在庫を抱えても経営的に問題はないでしょうが、中小
の会社は、在庫を抱える資金を借りて、材を売って回してゆく。回せているうちは良いが、
一旦止まってしまうと、在庫を抱え倒産するのが中小企業の常なので、その1回目の分など
を支援することを林野庁としても考えている次第です。
需要に応じて、的確に供給できる体制を作って行くことが、一つの課題です。
Q.木材サプライチェーンについては、山元から土場に出る木材費用は欧米と変わらないが、
土場から最終消費者に渡るまでの費用が数倍高いという指摘にはどう思われますか?(岡本)
A.それは材によって違います。現在日本のスギが世界で一番安い木材です。
自給率のアップもそれが原因です。昔は国産材が高く輸入材が安いと言われてきましたが、
スギの柱の方が、外材に比べて価格優位性を持つようになってきています。補助金を入れた
間伐によって出くるスギ材は、原価も安く最終価格も比較的安くなっています。
しかしスギ丸太の出荷価格は安く、山元にとって納得のいくものになっていません。
「山元から土場に出る木材費用は変わらないが、土場から最終消費者に渡るまでの費用が、
数倍高い」という指摘について言えば、だいぶ改善されてきています。
むしろ山元の取り分が欧米に比べてメチャクチャ安い。そこを何とか利益をあげさせたい。
昔は、木材の値段が高く、通直な丸太の部分だけを売っていればよかったのですが、安い
輸入材につられて通直丸太の値段が安くなり、安くなった分、川上にしわ寄せが行きます。
昔は大きく儲けていた森林所有者も、今では全く儲からなくなったのが現状です。皆伐し、
植林しても息子の代で元が取れるので大丈夫、という収益構造を作らなければなりません。
それには先ず、元玉以外の、今迄山に捨てていたチップや燃料に使えるB材やC材部分を、
バイオマス発電で利用し稼ぐように、1本の丸太の価値を上げ収益性を改善すること。
次に、構造強度だけが求められる大壁造の柱だけでは、なかなか収益性が上がらないので、
昔珍重され、高価格で取り引きされていた、4面無節材のような、現在行き場がない良材を
使うような需要を再度作ることも重要です。
Q.木材サプライチェーンには助成金が出ているからと原木が買い叩かれる問題があります。
消費者に行きつくまでの木材価格が高いという問題も含めて、土場以降の流通に、林野庁、
国交省だけでなく、経産省も関われば改善されるのではないかと思いますが?(岡本)
A.ようやく、みんながWin- Winになるようなサプライチェーンが示されてきていますが、
これまでは、川上と川中が握手をしていませんでした。川上は買い叩かれたと思い、川中と
しては、欲しい時に材も出せないくせに何をいっているという関係でした。
物の値段は需給関係で決まるので、川上の山元は買い叩かれないよう供給すべきなのです。
しかし川上は、需要状況を読まず、何も考えず自分の都合だけで丸太を出していた訳です。
昔は、需要供給のバランスの中で製材工場が高値で買い付けたかもしれないが、今はそんな
ことなら輸入材を使うと言われる状況です。川上としては、丸太が出荷された後どのような
価格になっているのか? いつ出せば高く売れるのか? 考えるべきなのです。
一方、今や何十億円規模の設備もある、装置産業としての製材工場は、それを5年10年で
償却しなくてはなりません。そのため、丸太を安定的に購入、安定したコスト採算の必要が
あります。しかし木材市場で木材価格が短期間に変わるようでは、コスト計算も無理です。
それである時は髙値で買って損も出すが、ある時は買い叩き利潤を確保し相殺する、そんな
商売も今まで多かったのです。しかしそれでは、川上、川下、どちらにとっても不幸です。
今後は、製材工場側が、マーケットの価格を見て買える値段を提示し、その値段で3ヶ月、
半年と安定して買う。川上もこの材を出せばいくらの価格で売れるのか、分かれば安心して
生産できるし、生産効率を上げてどれだけ儲けようかということも考えられます。
これからは、そのような生産と需給の関係を作って行くことが必要です。
そうなれば、川上・川中・川下が、Win- Winの関係になります。
それが、大ロット化、直送化、システム販売ということです。
要は、その都度、いちいち競りで価格を決めるのではなく、製材工場と供給側がある程度の
量をまとめて協定取引を行い、安定化をはかり、互いの接点を見出せば、Win- Winの関係に
なって行くということです。また今までは輸入材が安かったという話もありましたが、為替
が、半年の間に1〜2割も変わるのでは、製材工場としてはまともな原価計算もできない。
しからば、国産材の価格が多少高くても、安定供給してもらえるなら、国産材に切り替えて
も良い。このような流れになってきています。
(このほかに参加者からも多くのご質問がありましたが、紙面の関係で割愛致します。ご了承下さい。)
司会:当会副代表桜井からひとこと今日の締め括りを致します。(森の駅推進協議会幹事 西村)
桜井:今日は小島さんありがとうございました。課長の面目躍如でございました。
木材産業課長のお立場から、出口をちゃんときっちりしろというお話を、上手にまとめて
頂いたと思います。特に最近は木材の受け皿の方がかなり分かってきた、分かっていない
方が多い中で、分かってきたということです。
新国立競技場を設計された隈研吾さんが、木材を絶対使うと頑張っておられます。認証材
をしっかり使うのだという話もされました。そういう基調が整いつつあるこの好機に、
もっと国産材の意義を出して欲しいと願っています。
大手ハウスメーカーの家は、相当の宣伝費も入った価格だということを思うと、木材その
ものの値段にプラスが入っている。それでもその値段で売れるのですから、無垢の木材は
もっと売れて然るべきでしょう。今日、いいお話がありました。
無垢の木材の家は、次に売る時にもちゃんと高く売れる。
「平均寿命では、これから住んでも20年です。今から100年住宅を建ててどうします。
子供達はそんなものいらないと言っていますよ。」と言われ困っていました。
しかしこれからは、売る時にも高く売れる、と言えます。(笑)
山の方のお話しになりますが、無理に植えた所で駄目なところは無理しない方がいい。
しかし、国産材を使わなければいけないというところはあるのだということで、林野庁は
いろいろと叩かれながらも、粘り強く続けてこられました。継続は力なりといいますので
これからもよろしくお願いいたします。
我々もまだまだ応援をして行きたい、皆さまと情報交換をして行きたいと思いますので、
森の駅をこれからもよろしくお願い致します。 (森の駅推進協議会副代表 桜井)
記事作成に当たっては、講演記録テープから書きおこされた当会杉山顕一氏のご協力を得て、メルマガのスペースに
合わせて編集部で整理編集、一部割愛致しましたことをご了解下さい。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
天然の木材による住まいは「健康の泉」
住まいは消耗品か「資産」か?
従来は資産であった住まいが、消耗品になったのは戦後のことです。
現在、新築している家の多くが耐久性20年、税制で25年の消耗品になっています。
自動車の価額の約5−8倍の消耗品に過ぎません。
そのようなことを繰り返して良いのでしょうか。
道路や街を掘り起こしては埋めて…を繰り返し、
更に家を建てては壊しを繰り返してGDPを高めた時代、それは終わったのです。
資産になるような健康な家を考えましょう。
それは、やがて日本の森を元気にします。
森の駅推進協議会では、上記「健康の泉」に代表される問題の解決へ向けて、
森の駅発と称し下記の活動を行っています。
あわせてご参照の上お役立て頂ければ幸いです。