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COP21 パリ会議の概要&山小屋通信–14

COP21パリ会議の概要
小澤普照(JOFCA会長、森の駅推進協議会代表)

皆様、新年おめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。
新年にあたり、昨年末開催されたCOP21パリ会議の概要をお届けします。
先ず、全体の概要ですが、COP21パリ会議は、
2015年11月30日から12月13日まで開催されました。

正式には国連気候変動枠組条約(以下条約という)第21回締約国会議(COP21)
京都議定書第11回締約国会合(CMP11)等として行われました。
参加者は198カ国・地域、国際機関、オブザーバー等約3万人
(前回リマ会合では参加者は1万人)、日本代表団は、
安倍総理、丸川環境大臣等のほか,各省担当者は外務・経済産業・環境・
財務・文部科学・農林水産・国土交通等約100人が出席しました。
農林水産省は、西郷技術総括審議官および沖林野庁次長ほかのスタッフが
同行して参加しました。

145カ国の各国首脳がステートメントを述べ、うち55カ国が
「森林」、「森林減少・劣化」、「REDD+」(レッドプラス)、「生物多様性」
のいずれかの重要性に言及しました。
また日本を含む17カ国が森林と気候変動に関する首脳宣言を発表しました。

首脳会合では、安倍総理が次の表明を行いました。

〇今こそ先進国、途上国が共に参画する、温室効果ガス削減のための
新たな枠組みを築く

〇パリ合意には、長期目標の設定や削減目標の見直しに関する
共通プロセスの創設を盛り込み、日本は会議に先立ち提出した
約束草案や適応計画を着実に実施していく

○ 日本として、途上国支援及びイノベーションからなる貢献策
「美しい星への行動2.0」を実施していく

〇途上国支援については、2020年に官民あわせて年間約1.3兆円の
気候変動対策支援を実施するなどについて述べました。

首脳会合のほか、会期中さまざまな議論が、閣僚級等いろいろなレベルで
行われました。また、ハイレベルセッションには多くの閣僚が参加し、
REDD+と森林に関するハイレベルな会合では、
林野庁沖次長も森林吸収源について発言を行いました(12月8日)。

パリ会義の主要な成果

パリ会義の結果、2020年以降の国際的な温暖化対策の枠組みが、
パリ協定として採択されました。
その内容は、途上国を含む全ての国に、削減目標の提出と対策の実行を
義務づけるもので、削減目標は5年ごとに見直しを行うこと、
温度上昇を2℃以内に抑制し、
なお1.5℃以内に抑制することを努力目標として設定する。
また今世紀後半には温室効果ガスの人為的排出と吸収が均衡するようにする。
途上国への資金支援は、先進国には義務付けを行い、
途上国には自主的提供を奨励するというものです。

【農林水産関連分野】
食料安全保障・森林等の吸収源の重要性を認識。
森林や農地の吸収量を、各国の削減目標に計上することを可能とします。
また途上国の森林減少・劣化に由来する排出削減の取り組みを
促進することとします。

【森林関連分野】
大きくは排出削減(緩和)への取り組みと、
森林を含む吸収源・貯蔵庫の保全及び強化の二つで、
緩和については、条約4条13項により、
「貢献」(排出・吸収量)の計算を行うが、透明性・正確性等が求められます。
また条約4条14項は既存の方法論・指針の考慮を可とし、
吸収源対策については、条約5条1項により、
締約国は、吸収源・貯蔵庫の保全および強化のための措置を定めます。
条約5条2項は吸収源対策ですが、これに途上国も加わることとなったため、
より包括的なものになりますが、従来から日本が主張してきた、
柔軟性のある枠組みとは矛盾するものではありません。

【先進国の森林等吸収源対策としてのLULUCF】
LULUCF(Land Use, Land Use Change and Forestry)は、
森林等が持つ炭素吸収量能力を高めることや炭素排出を抑制することで、
温暖化防止に貢献するとして注目されてきたものです。
吸収源の範囲に関しては、
土壌内の炭素量も吸収源として検討の余地があるとされており、
その範囲が拡大される可能性があります。
LULUCF補足情報と称される事項については、パリ協定により、
途上国も参加することになったため、LULUCF補足情報の報告の継続と、
より包括的な計上を目指すことになります。したがって、
各国の事情を踏まえた柔軟性のある枠組みとすべきものとなります。
また新たな法的枠組みは、
途上国を含む全ての締約国に適用されることから、
パリ協定の詳細ルールの検討に当たっては、
REDD+の方法論との関係にも留意する必要があります。

【途上国の森林の取り扱い(植林CDM、REDD+)について】
REDD+の経緯はCOP11(モントリオール・2005年)でPNGとコスタリカが
REDD(Reducing Emission from Deforestation in Developing countries)の
概念を共同提案したことに始まります。
その後COP13のバリ行動計画で、次期枠組みにおける具体的検討項目として
REDD+を対象とすることで合意されました。
さらにCOP15ではコペンハーゲン合意としてREDD+、
すなわちReduction of Emission from Deforestation and forest Degradation+ 
「途上国における森林減少と森林劣化からの排出削減、並びに森林保全、
持続可能な森林管理、森林炭素蓄積の増強」を意味するものとして
整理されました。
すなわち、REDD+は途上国に対して、
森林保全に経済的インセンティブを提供することで、
森林を伐採するよりも残す方を、経済的価値の高いものにしようという
試みとして、認識されてきたということになります。
しかし、REDD+についてはいろいろ課題もあり、
議論の継続も必要と考えられています。

【植林CDM(クリーン開発メカニズム)の対象活動の追加(議題11(d)の結果):
京都議定書第3条とクリーン開発メカニズムにおける土地利用・土地利用変化・林業】
(注、SBSTAとは科学および技術の助言に関する補助機関)
対象活動の追加については、具体的にはアグロフォレストリー、
シルボパストラル(混牧林)を、
既存のCDMに追加できるかどうかの検討が、COP21で行われたが、
単純に既存の手続きを適用することは不可ということになり、
今後の検討に持ち越されることになりました。

【その他のトピックス】
前述のほか、COP21の期間中にJICA-JAXAによる
「熱帯林変化検出システム〜森林ガバナンス改善イニシアティブ」の紹介や、
また12月1日にジャパンパビリオンで行われたパネルセッション
(JICA、森林総合研究所、森から世界を変えるREDD+プラットホーム主催)
における議論のなかで、民間企業としてはビジネスが成り立たなければ、
CSRだけではREDD+の実施は難しいとの意見もあり、
一方、カカオのバリューチェーンというビジネスモデルが成立したが故に、
社内の理解が得られたとの事例紹介もあり、
パネルセッションのまとめとしては、民間企業の参画は重要、
公的セクターの役割として政府の補助金制度・JICAの技術協力による
サポート拡大も重要であり、そのため産官学の連携は不可欠、
日本のプラットホームによる取組の重要性が認識された。
ほかにテレビ東京による『池上彰の2016 年世界を見に行く』(2016.01.03)
などによる国内での紹介も報告された。

注:本稿作成に当たり下記のホームページを参考にさせていただきましたが、
詳細については、下記のURLを閲覧されることをお勧めします。

農林水産省 http://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/kankyo/151215.html

「COP21/CMP11(フランス・パリ) における森林吸収源に関する議論」
飯田 俊平(林野庁 森林整備部 森林利用課 国際研究連絡調整官)
「COP21/CMP11(フランス・パリ) におけるREDD+に関する議論」
井上 泰子(林野庁 森林整備部 計画課 海外林業協力室 課長補佐)
「COP21/CMP11(フランス・パリ) におけるJICAの情報発信
岡田 裕貴(JICA 地球環境部森林自然環境G 調査役)

森の駅推進協議会の代表の小澤普照氏は、
1992年にブラジルのリオデジャネイロで開催された
国連環境開発会議(通称、第一回地球サミット)で、
政府代表の中村環境庁長官が急遽帰国されることになり、
当時林野庁長官の小澤様が代わって政府代表を務めることになりました。
このサミットは、市民団体等の非政府組織も出席し、参加者が2000人を超える大会でした。
貧困問題や、生物多様性、絶滅危惧種、地球温暖化の問題等が協議され、
「環境と開発」の行動に関するリオ宣言が採択されました。
関心を高めたこのサミットのお蔭で、後の「京都議定書」へ繋がりました。
かかる次第で、この度のパリでのCOP21に就いて感想を寄せて戴きました。
(森の駅推進協議会代表幹事:岡本守生)
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山小屋通信–14「変わる植生、土壌流出、乾燥問題」大森 明

山小屋(工房)のまわりが少し埃っぽい。
地球規模の温暖化、異常気象もあるだろうが、
鹿の群れの「大攻勢」が大きな影響を及ぼしていると思う。
草や葉を食べて、食べて、また食べる。その結果、「これは食えない」という感じの
草だけが残ったり、増えたりしているようだ。マムシグサ、タケニグサ、そして苔。
家族が森林管理の仕事についていた関係で、同僚の方が山小屋に来たことがある。
周辺を見てひとこと、「これは鹿にやられていますね」。
無くなってしまった植物には名残惜しいものが多い。
ホップと同じ形の実がなるツル性のカラハナソウ、刺身で食べた山ウド、
湿地に生えていたセリ、山ユリ、鳴子ユリ、タラノメ、ナギナタコウジュ、
ゲンノショウコ、野イチゴ、野ばら、ガガイモ、タケノコ、そして竹藪丸ごと。
以前は草やツルが藪を形成していたのに、今ではマムシグサがさっぱりした地面に
ぽつぽつと鎌首をもちあげ、向こうにタケニグサがぽつぽつ・・・といった具合。
全体的に土がけっこう露出し、斜面では木の根がむき出しになっているところがある。
ベランダを掃除していても砂埃ぽい汚れが多く、雑巾がすぐ茶色になる。
一方工房の中が埃っぽいのは、当方の掃除ぎらいと、
書籍やガラクタ類を捨てられない性格に因るので、責められない。
アートは混沌とガラクタから生まれるのである。

=次号に続く=
(巻末に著者撮影の写真があります。上が昔の緑豊かな裏山、下が現在。あわせてご覧下さい。)
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森の駅推進協議会活動報告

1月18日 幹事会【健康住宅研究会、市民フォーラム、里山部会、メルマガ部会の報告・協議】
1月21日 健康住宅研究会1月例会【新年度方針】
1月23日 森の駅候補地視察【山梨県】
1月26日 市民フォーラム開催【講演:アヴァンティ創業者 渡邊智恵子氏】
(詳細については各担当幹事にお問い合わせ下さい。)