木の強さを生かした家づくり

都市はもう一つの森林と考えられます。
なぜなら日本の全住宅で使用されている木材の量は日本の森林の木の体積に換算すると、全体の約20%にも相当するからです。
日本の都市は森に愛される都市であるといってもいいでしょう。

木が住宅に用いられる大きな理由の一つはその強さにあります。
木材は他の材に比べて、軽くて強いといわれています。
したがって、同じ建物をつくるときに軽くできると利点があります。
地震に対する強さは重さに比例するため、基礎工事をさほどおおげさにしなくても済むという利点があります。
引っ張り強さ、圧縮強さとも重さ当たりの強さで比較すると鉄よりも強く、コンクリートと比べると4~5倍の強さがあります。
木は多孔質物質で、細胞内に空隙がたくさんあります。針葉樹は広葉樹に比べて比重が小さく、軽いため、建築には使いやすい素材です。

木は方向によって強さが大きく異なります。
また含水率が高くなるほど、呼吸するかのように伸び縮みします。
伸び縮みが調湿性という利点なのですが、欠点でもあります。
だからこそ木の向きを考慮して施工することはとても重要で、それができれば木の強さと調湿性の双方の利点を生かすことができます。

集成材はさまざまな向きに貼り合わせることで、伸縮を抑えることができる大きな利点があります。
しかし、貼り合わせに接着剤を使用しているので、長い年数経過によって接着剤の効力が薄れ、はがれが生じるリスクがあります。

柱の場合には年数を経過し太くなった木の芯持ち材が強さを発揮します。赤身の芯の部分は未成熟で強度が低いのですが、その回り全体を強度の強い白太が囲むため、たわみが均等となり狂いにくい丈夫な木材となるのです。

木材は腐らない限り、いつまでも丈夫です。
腐るのは腐朽菌によるもので、腐朽菌は含水率でいえば20%以下なら活動しないので、水分の管理が最大のポイントです。
換気の重要性はこんなところにあります。
からっとした日は窓を開け、じめじめした日は窓を閉めるというのは、木材の水分調整の理にかなっていることなのです。
逆に腐朽菌によって腐るということは、将来不要になれば廃棄できるということです。
森の中で、役割を終えた木は腐ってなくなっていきます。
腐るということはとても重要で、腐らないマイクロプラスチックによる海洋汚染が海洋生物の生命を脅かし、地球にとって大きな問題となっています。