メルマガ84

「森の駅発」メルマガ 第84号

★ 第24回森の駅発市民フォーラム報告(後半)
テーマ:国産材利用の現状と今後の展開方向
講 師:小島孝文氏(林野庁 木材産業課課長)

★ 天然の木材による住まいは「健康の泉」と当会の活動紹介

*前号に続き市民フォーラム報告により、好評連載中の山小屋通信はお休み致します。
                                                      
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第24回森の駅発市民フォーラム報告(後半)
日 時:2016年6月2日(木)
会 場:ベニーレ・ベニーレ
講 師:小島孝文氏(林野庁 木材産業課課長)
テーマ:国産材利用の現状と今後の展開方向

林野庁小島課長をお迎えした講演「国産材利用の現状と今後の展開方向について」
の前半を前号で報告し、今号では続く後半をお届け致します。

講演内容(後半)

講演は、小島氏が作成された豊富なカラー図版と、解り易い見出しとともに進みました。
ここではその解り易く整理された小見出しに従って、簡単にご報告します。
前号紹介済みの前半部見出し
□ 国産材利用の現状と今後の展開方向について
□ 我が国のかつての「木の文化」、日本人の生活の中には木があふれていた
□ 木材利用の意義
□ 国内の森林資源は利用期
□ 我が国の人口推移の見直し
□ 木材需給の現状
□ 林業・木材産業の現状
□ 「林業成長産業化」のシナリオ
□ 国産材の安定供給体制が目指すところ

今回紹介の後半部見出し
■ 木材需要創出・拡大におけるポイント
■ 国産材の需要構造
■ 階層別・構造別の平成25年度新設着工床面積
■ 公共建築物等の木造を巡る動き(戦後)
■ 都市の木質化に向けた新技術の開発・普及
■ 土木分野における国産材製品の活用
■ オリンピック・パラリンピック関連施設における木材の利用方法
■ 森林認証について
■ 「林業復活・地域創生を推進する国民会議」の活動と推進
■ 産業界における国産材需要拡大に向けた取組

後半内容

■ 木材需要創出・拡大におけるポイント
国産材の需要拡大のためには大きく4つの方法がある。
1.輸入木材を国産材に代替する。
2.非木質系製品を国産材で木質化する。 
・非木材分野(ビル、オフィス、商業施設)も木造化。内装の木質化を進め、都市の木質化を
図ってゆく。
・ 土木分野においても、丸ビルの建替えの時、80年前の木製の基礎杭がそのまま腐らずに出てきたが、そうしたことも含め木材を使える土木分野がまだまだある。
適材適所を基本に木材を使っていく。
・家具、什器など生活用品における木材利用。まずは身の周りの、木に直接触れ、肌で触れるところに木を使い、木の質感、柔らかさ、香り、木の落ち着く触感を体験してもらい、その後の木材需要につなげて行くことも重要。(これを木づかい運動とも言っている。)
・また、木材の加工技術を生かしたセルロース・ナノ・ファイバーなど新しいマテリアル利用の用途もある。
3.木質バイオマスのエネルギー利用の推進。これは丸太をいきなり燃やしてしまうのではなく、建材などに色々使った後、最後の木材をエネルギーとして利用。枝葉など木材として使えない所はバイオマスとして熱利用していくことで、収入を今までよりあげることができる。
4.国産材製品の輸出。今後国内マーケットが小さくなるなかで、海外、特にアジアの富裕層をターゲットに、ジャパン・クール、ジャパン・プレミアムで付加価値を高めて売るという勝負ができるのではないか。

■ 国産材の需要構造
立木は真直ぐな所を丸太に使い、少し曲がったところを合板に使い、その先の枝や曲がった所はパルプ、チップに使っているが、用途に応じて使い分けしている。
重要なのは、通直な原木(A材)が高く売れるので、ここのマーケットをしっかり作って行き、森林所有者に利益を還元し、山を売ってもう一回再造林しても利益が残る。
これなら皆伐しても良いと思える収益構造を作らないと循環的にならないので、そこのところをしっかりやって行く必要がある。

■ 階層別・構造別の平成25年度新設着工床面積
住宅分野では、木造がたくさん使われている。だが同じような低層の非住宅(商業施設、倉庫)でも木造が使えるはずだが、なかなか木材が使われていない。
一方、中高層の大型建物には、これまで木造が難しかったが、CLT(直交集成材)など新たな部材が出てきて、こうしたところにも木材が使われるような技術革新も出てきた。

■ 公共建築物等の木造を巡る動き(戦後)
第2次世界大戦の空襲や関東大震災などで各都市に大火災が発生、多くの命が失われたため、街は不燃化すべしと、昭和25年衆議院で「都市建築物の不燃化の促進に関する決定」が通過、木材資源分野でも、山に木が少ないなか、高度経済成長で木材需要が増大しているので、木材を住宅に回すため住宅以外に木を使わないよう、昭和30年「木材資源利用合理化方策」提出。
都市の不燃化と相まって、昭和30年代以降の都市部は積極的に木を使わない政策が採られた。
その後、木質構造の不燃化などの技術開発が進み設計の考え方も変化、同時に木材資源の充実も進んできた中で、先の流れとは逆に、今後は都市でも積極的に木材を使う時代ではないかと、平成12年建築基準法改正(性能規定化)、平成22年建築基準法改正(木造関係基準の見直し)がなされた。
学校建築も木造にしようということで、3階建の実物木造校舎の火災実験を3年間行った結果、今日の建て方や部材を使えば、建築基準法をクリアすることが実証され、こうした建築基準法の改正がなされた。

■ 都市の木質化に向けた新技術の開発・普及
都市の木質化を進めていくための新たな部材の開発の一つにCLT(Cross Laminated Timber)
がある。引き板を繊維方向に縦横に直交して並べて積層接着した板材で、コンクリートより
軽くコンクリートと同程度の強度が出る。1980年代ヨーロッパで開発され、ヨーロッパでは
これを使い10階建ビルもできるようになっている。また建築基準法の耐火時間をクリアする
木質系耐火部材:耐火集成材も開発されてきている。このように、新しい木質部材ができて、
京都木材会館(4階建て)の様な建築が可能となってきており、さらに進めてゆきたい。
そして、こうした新しい木質部材だけではなく、今まで流通している柱・梁など木質部材でも
設計方法を工夫することでp19のウッディアリーナ朽木、道の駅あいづのような大規模建築、
意匠性の高い建築ができるようになってきた。
平成22年、国は原則として庁舎、宿舎、倉庫などの3階建ての公共建築物を木造にしなければ
ならないという、「公共建築物等木材利用促進法」を策定し、国だけでなく、都道府県市町村に
対しても一緒に取り組んで頂いている。

■ 土木分野における国産材製品の活用
コンクリート型枠は、今まで南洋材のラワン合板が主流だったが、国産材も技術革新により、
合板型枠として使えるようになってきている。国産丸太材も、液状化防止の地盤改良杭として
工法が開発され、広く活用され始めてきている。さらに、これまで紹介してきた国産材の利用、
都市の木質化への取り組みを積極的に進めるため、国はこうしたトライアルの事業に対して、
「都市の木質化等に向けた新たな製品・技術の開発・普及」、「地域材利用促進」など補助事業
で支援を始めている。

■ オリンピック・パラリンピック関連施設における木材の利用方法
こうした流れの中で出て来たのが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックである。
競技施設や選手村を木造化するとともに、備品等にも木を使ってもらう取り組みを進めてきた。
昨年7月25日に新国立競技場の全面見直しとなり、木を多用した隈研吾氏の案が年末に採用、
これが大きなモニュメントとなり、都市の木質化に向けレガシーとなってゆくのではないかと
思っている。屋根は鉄骨と木材のハイブリット構造、日本の神社仏閣を思わせる軒庇、外周の
ルーバーにも木が多用され、内装も木材を使う設計。加えて、はじめは樹脂製だった観客席も
内外装に木を使いながら、肝心要の観客席が木質でないのは、画龍点睛を欠くとの意見も出て、
観客席も木製にする取り組みが始まっている。斯様にオリンピックでは様々な木材が使われる
ので、これまでの木質化の流れも含めオリンピックは国民に広く発信するうえで良い機会だ。

■ 森林認証について
木を使うことは環境破壊だと思っている人はまだまだ多い。
そうした中で、ロンドンオリンピックあたりから、木材の調達については持続可能な森林から
木材を使っている。熱帯林の環境破壊に繋がるような木材ではないと証明された木材だけを、
使うような流れになってきた。

■「林業復活・地域創生を推進する国民会議」の活動と推進
こうした取り組みについては産業界からも応援をいただいている。
日商会頭の三村明夫氏(元新日鉄会長)が地方創生という言葉が出てくる7年位前より、日本
を元気にするためには地方を元気にしなくてはいけない。地方を元気にするには第1次産業が
肝要だ。中でも林業は、今まで一所懸命資源を使ってきて、後は使うところをちゃんとやれば
伸びて行く可能性がある。だから、産業界としても木を使うところを応援したい。
ということで「国民会議」というのを呼び掛けて作っていただいている。

■ 産業界における国産材需要拡大に向けた取組
その理念は、需要拡大をして林業を復活させて、地域創生をするというトライアングルの関係をやってゆくことで、色々な政策提言をしていただくという取り組みをしてもらっている。
分かりやすい取り組みとして「国産材マーク」というのがある。
業界の人間は国産材とか外材あるいは輸入材とか言うが、一般消費者は国産材、外材など意識したこともなく、日本で家を建てれば、山にこんなにたくさんの木が生えているのだから当然、日本の木を使っているだろうと思う人が大多数。
そのような人たちを相手に、国産材を使っていただく取り組みをしてゆかなくてはならない。ハウスメーカーの営業マンがそうしたことに関心のない施主に「国産材を使いませんか」と勧めても全然ピンとこない。
営業ツールが必要という声を受け、推進するJAPIC(日本プロジェクト産業協会)の中でできたのが「国産材マーク」である。いまや合板をはじめ、製材品、木質ボードに広がり、このように国産材を広める取り組みがおこなわれている。

以上の様な取り組みを通して、皆さんに木材を使う意義をご理解いただき、林業を元気にし、地方を元気にする取り組みをしている最中です。皆さまのご理解を頂き、応援して頂ければ、大変有難い思いです。

記事作成に当たっては、講演記録テープから書きおこされた当会杉山顕一氏のご協力を得て、メルマガのスペースに
合わせて編集部で整理編集、一部割愛致しましたことをご了解下さい。

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天然の木材による住まいは「健康の泉」
住まいは消耗品か「資産」か?
従来は資産であった住まいが、消耗品になったのは戦後のことです。
現在、新築している家の多くが耐久性20年、税制で25年の消耗品になっています。
自動車の価額の約5−8倍の消耗品に過ぎません。
そのようなことを繰り返して良いのでしょうか。
道路や街を掘り起こしては埋めて…を繰り返し、
更に家を建てては壊しを繰り返してGDPを高めた時代、それは終わったのです。
資産になるような健康な家を考えましょう。
それは、やがて日本の森を元気にします。