木の香りのする住まいづくりのプロデュース

◆ 選択する商品と自分流の住まいの違い

 都市住宅は戸建と集住型のマンションでは根本的に発注方法が違います。

一棟建てのマンションの場合は一戸一戸が商品として販売されるため、共用部となる骨組や基礎工法に注文を付ける事ができません。
先ごろ、横浜市都筑区で起こった杭工事のデータ偽装も、設計者と施工者そして販売会社の同一の資本系列の会社である事で、企画から完成までのプロセスの各段階で監理、監督する、系列に属さない第三者的な職能者がプロジェクトに参画していないため起こってしまった事象でした。

戸建もメーカーハウスの場合、親会社の得意分野の建材(鉄、ガラス、コンクリート、木材)を主にした工法で造るため、子会社である以上、素材そのものの性能まで検証したり、強度の確認はできません。
一定の試験機関で認定されたデータがあれば、規格品の工場製作であるため、個別にチェックする必要はなく概ねモデルハウス等で使用されている仕上、仕様のものが現場に持ち込まれ、組み立てられ完成、引き渡されます。
したがって第三者のチェックが行われることはありません。

 だが、ひとたび自分流にこだわりを持って木の家づくりをするとなると、素材の選定から色柄、手触りまで、自らの尺度を持って確認し、発注するため、チェックしなければならない事が大量に発生します。
そこでは、見た眼だけでなく、材質や性能に至るまで十分な説明と知識を兼ね備えた専門家の協力が欠かせなくなります。
また、その専門家には注文主との打合せ等に十二分の時間を確保できる事が求められる事になります。

 木造住宅の場合、大工、工務店に依存する事になります。
(メーカーハウスの場合、営業マンの言い分に振り回されます。)
因みにユーザーとしては、専門領域の事は立ち入れないため担当者の人柄や、会社の経歴を勘案しながら提示される見本からの選択を強いられる事になります。
結果、チェックが甘くならざるを得ません。


◆ 意思決定の重要性と適材適所
 さて、健康住宅/森の駅発の住まいづくりでは、環境・健康・安全が主たるテーマの家づくりであり、無垢の国産材を構造材、内装材に使う事で木の香りがする空間に包まれた住居を目指しています。
住み手の健康を第一に考えれば、集成材ではなく、国産無垢材の選択が不可欠であるが、現況では戸建住宅の80~90%は外材によって造られています。
産地から消費地の現場までの流通システムにリスクとロスがあり、国産材がつかわれなくなっています。
そこで、健康住宅/森の駅発の活動の主たる目的として住まいづくりのマーケットシステムからリスクとロスを減らすための提案をし、必要な木材を必要なだけ注文する職能者を育み、産地と現場をダイレクトなネットワークで結ぶ事が出来る事が重要な活動の要素となっています。
必要とする木材の質と量を指定する事が、家づくりのコストを下げるためには欠かせないからです。

 日本の国土面積の70%が山林と言われています。
そして高温多湿な日本の風土には木の香りする住まいこそ、爽やかで、心地よい生活ができます。
コーディネーターを育み、家族の健康を第一に考える家づくりにプロのスーパーバイザーとしてプロデューサー業を自立させ、ユーザーの求める木材のサプライチェーンを確立します。
森の駅発の活動の基本にしたいと思います。


◆ ストックとフローを一致させる事

 私達森の駅推進協議会の副代表の東京大学森林利用学研究室の酒井秀夫教授が、日本の森林施業と海外の事情と比較したレポートがあります。
問題点は、欧州松(ホワイトパイン)を出荷して日本のメーカーハウスと取引をしているスウェーデンと比較して見たところ、川上の森林から伐採された立木が、川下のエンドユーザーの手に渡るまでの価格差が日本の1/7で実行されているという事でした。
これほどの差があれば、日本の林業が立ち行かないのは明白です。なぜスウェーデンでは、それが可能かといえば、徹底した機械化と生産、流通、販売システムがエンドユーザーの需要に合わせて情報化され、川上から川下の直に伝送されるため、木材のストックとフローが一致し、無駄が生じないからです。

 これは住宅政策と流通システムが日本とスウェーデンに大きい違いがあるのだ。日本では江戸時代から木材価格が市場の動向に支配され、消費者にはオープンになりません。
立木が製材品となるまでのロスと、乾燥を経て製品となるまでの質を確保するためのリスクが読み切れないからです。
そこで、川上の林業家から川下の工務店がチームを作り、設計段階で必要とされる木材の量を把握し、それをあらかじめ産地に指示する事が出来、かつ木材の買付時期を選ぶ事が出来れば市場マインドから開放されます。
単純なようだが、家づくりのコーディネーター役が確立されれば可能になるのです。


◆ 二段階発注による木材の買付予約

 設計事務所が住み手のライフスタイルを形にし、間取り図から設計図を起こし、さらに架構図を製作する事で、木造住宅の木材使用量は決まります。
最近ではプレカット加工場が全国にでき、余程難しい架構でない限り工場加工により、軸組製作は可能になりました。
ひと昔前、寺社建築は本堂や庫裏の建て替えも、定期的なメンテナンスを行い計画的に行われていました。結果として伊勢神宮のような20年スパンの遷宮用材の確保が行われていました。
つまり必要な材を必要なだけ確保する事があらかじめ決めた適正価格でおこなわれていたのです。

 住まいづくりも、この手順を踏襲すれば良いのではないでしょうか。
木造の骨格(スケルトン)は一定の規則性があり、日本には尺貫法による三尺、六尺をモデュールにした間取り図と言う便利な手法があります。
プロトタイプのモデルプランを元に、内部造作(インフル)との関係は専門家と相談し、家づくりのコンテンツを共有します。
仲間とチームを組み、木材の調達と住まいづくりを二段階に分けて発注すれば可能です。
産地とのコーディネーターを通しての買付予約をすることで、ロスの多い流通システムの制約から解放されることが必要なのです。
たとえ注文住宅であっても木材の基本寸法に準拠したプランを基に、骨格(軸組)を決めて、定尺の製材寸法による必要な木材のリストをまとめておけば、無駄が生じないため、無垢材であっても、木の香りのする住まいを廉価で実現する事ができます。
住まいづくりの設計監理者がネットワークを組み、プロデュース感覚を身に付ける事が全ての始まりになります。