化学物質過敏症予防策

以下の内容は化学物質過敏症の発症を予防し、また早期の回復を目指すための一助として、一般的に必要だと思われることを、化学物質過敏症支援センターがまとめたものです。

1.対処法・生活の仕方
1)対処法・生活の仕方の基本
①身体に取り込む化学物質の総量を減らす
②体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する
③規則正しくストレスの少ない生活により身体機能を改善する
この病気の予防法は、発症した方の対処法・生活の仕方と基本的には同じです。身体に取り込む化学物質をできるだけ減らすなど、ここに示したことを参考にして生活することで、発症を予防できる可能性が高くなると思われます。

2)身体に取り込む化学物質の総量を減らす
(1)自宅(の空気質、環境)が原因であり、他に居場所がある場合は、原因の家から出る
自宅にいると症状が出るが、親戚や友人の家などに行けば症状が出ず、滞在が可能な場合は、とりあえずそこへ避難しながら、自宅についての対策を行ってください。
職場等が問題となる場合も対処方法は同じですが、医師などの助けも借りて、環境改善を訴えていくことが必要でしょう。

(2)室内の換気を徹底する(冬でも頻回に行う)
①風の通りをよくするため、家の反対側となるような位置で2箇所以上の窓や換気口を開けましょう。
・外の空気が良いことが条件です。
②換気扇をうまく活用しましょう(トイレ・浴室・台所など)。
・換気扇をつけ、そこから離れた窓を開けると窓から外の空気が入ってきます。外気が良くない状態の時、また壁の中や床下、コンセントなどからの空気を吸引した場合に、体調が悪くなる時は止めてください。

(3)身の回りにある化学物質はできるだけ早く戸外に出して処分する
 以下のものがある場合は、優先的に処分しましょう。
・防虫剤(衣類用など)
・芳香剤・消臭剤(居室用、トイレ用)
・合成界面活性剤を使用した製品
例)合成洗剤(洗濯用、台所用、洗面用、歯磨き剤、トイレ用、浴室用、シャンプー、ボディーシャンプー)、柔軟仕上げ剤(リンス、衣類用)、洗浄剤(パイプ用、トイレ用、コンタクト用)、化粧品、避妊薬など
・塩素系漂白剤
・整髪料、化粧品、香水
・殺虫剤、蚊取り線香、線香
・合板の家具(刺激を感じる場合や、新品の場合)
・一般の植木・鉢植え など

(4)居住空間における化学物質の揮発を最小限に抑える
①必要のないものはできるだけ処分するか、屋外に出しましょう。
・屋内に置いてあるものが多くなればなるほど、それに吸着・付着している化学物質の揮発が多くなります。
・新聞、書籍にも注意が必要です。屋外で空気にさらしてインクなどを飛ばし、読む時のみ屋内に持ち込みましょう。保管する場合はポリエチレンの袋等に入れ、必要がなくなったらすぐに屋外に出しましょう。
②汚染されていると思われても処分できないものは、ポリエチレンの袋等で密封して保管してください。
・例えば、しばらく着ない衣類、書籍、雑貨などです。
③掃除をしましょう。
・純石けん水または水拭きで拭ける所・ものを拭きましょう。また洗えるものは洗ってください。
・掃除機のごみパックは抗菌加工でないものを選びましょう。また排気に注意してください。掃除の際は出来るだけ窓を開けてください。
④外から持ち込むものは、外側を拭ける物は拭き、洗えるものは洗い、干せるものは干してから保管・使用しましょう。
・店内の汚れなどが表面についています。食料品の袋なども表面を水拭きした後、冷蔵庫等に保管することが望ましいです。
・ドライクリーニングされたものは、すぐに屋内にしまわず、戸外で十分干しましょう。
⑤備長炭を化学物質が発生する部屋や場所に置いておくという方法もあります。
・木炭は、空気中や水中の化学物質をある程度吸着します。ただし、吸着しきれなくなると、今度は吸着した化学物質を放散させますので、1~2ヶ月を目安に(場合によってはもっと頻繁に)交換または煮沸・天日干しをしましょう。
※煮沸の作業は、備長炭から化学物質が揮発するため発症者にとっては危険を伴います。そのため、屋外で行うか健康な人に頼む、または使い捨てにしましょう。
⑥空気清浄機を使用した方が良い場合があるかもしれません。
・できるだけ空気清浄機を使用しなくても安全に過ごせるような居住空間にすることが第一で、一時的に空気が汚染された場合等に空気清浄機を使用して改善することが原則となります。
⑦新品の家電品を購入・使用する際の注意・工夫について
・空気清浄機に限らず、新しい家電品は、本体のプラスチックや部品から可塑剤などの化学物質が揮発するため、それらに反応して使えないという発症者も少なくありません。そのような発症者向けに、空気清浄機は本体が金属製または陶器製のものが販売されています。
 ・新品は使用できなくても中古なら使える場合があります。その場合、発症者でない親戚、知人等が使っている家電品で大丈夫なものがあれば、それをいただいて、代わりに新品を差し上げるという方法もあります。または、新品を購入後ある程度の期間、戸外等で稼働させてから、屋内に持ち込むという方法もあります。

(5)食物はできるだけ自然食品をとる
①米、野菜、加工食品などは有機栽培(オーガニック)、無農薬・無添加のものを選びましょう。
・常食するもの(米、パン、お茶、調味料など)には特に注意が必要です。
②肉類(牛、豚、鶏など)・鶏卵は、安全な飼料で健康な育て方をされたものを選びましょう。
・一般的に配合飼料(農薬使用・遺伝子組み換えの穀物等が入っている)で育てられ、抗生物質や成長ホルモン剤等の薬剤が多く使用されています。
③魚介類は、天然のものやそれを自然塩のみで加工したものを選びましょう。
・一般的に保存性を高めるために塩素処理を行い、酸化防止剤などを使用するとともに、見た目を良くするためにも食品添加物が使用されています。また、養殖魚では抗生物質や抗菌剤等の薬剤を多用していることが多いと言われています。
④安全を重視した経営方針の食品・生活用品販売業者、または生活協同組合(生協)に加入すると、安全性の高い食品や生活用品を、まとめて購入できます。また、配送・宅配をしてくれる業者や生協ならば、スーパー等へ買いに行く手間が省けます。
・無農薬または有機農産物を扱っている、また合成洗剤を扱っていない(石けんを扱っている)ことなどを基準に、業者や生協を選びましょう。

(6)水道水に含まれる化学物質の除去
①水道水を飲用、調理用とする場合は浄水器に通すか、やかん・鍋のふたをとって4~5分沸騰させ、塩素やトリハロメタン(付録参照)を飛ばしてから使用するのがよいでしょう(換気にご注意ください)。または、市販のミネラルウォーターを使用してください。
②風呂やシャワーにも注意が必要です。
・風呂を沸かす時に備長炭を入れるか、浄水器、浄水用シャワーヘッドを通した水を使用しましょう。また、十分に換気をしながら入浴・シャワーを行いましょう。

(7)生活用品に注意する
①衣類・寝具等は、できるだけ天然素材のものを使用しましょう。
・綿や麻などを、純石けんで洗って着用・使用するのがよいでしょう。

※ただし、発症者によっては綿よりもポリエステル綿の布団や化繊の衣類の方がよいという場合があるため、ご自身で確認することが大切です。
・抗菌・防臭加工、撥水・防水加工、防ダニ加工、形態安定加工には薬剤が使用されていますので、避けてください。
②洗剤類について(付録参照)
・合成洗剤の使用はやめ、香料、エデト酸塩などの添加物がない純石けんに替えましょう。
・石けんには、固形、粉末、液体のそれぞれの製品があります。石けんと合成洗剤の違いは、固形か粉末かなどの形状の違いではなく、成分がまったく異なるのです。石けんの成分表示は、「純石けん分」「脂肪酸ナトリウム」「脂肪酸カリウム」「石ケン素地」「カリ石ケン素地」などです。合成洗剤の成分表示は、「直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム」「アルファスルホ脂肪酸エステルナトリウム」などです。
・「複合石けん」は、石けんと合成洗剤が混合されたものですので、使用をお避けください。
・「薬用石けん」は、「複合石けん」なので、使用をお避けください。
・ただし、石けんに反応する発症者も少なくありません。動物性原料(牛脂)や、植物性原料(パーム油、オリーブ油)など、原料の違いや、メーカーの違いによって、使えたり、使えなかったりする場合もあります。ほとんどの石けんは高価ではありませんので、いろいろと試して、ご自分に合うものを見つけてください。
・石けんを使わない洗濯の方法として、重曹、炭酸塩、または塩と炭を使う方法もあります(インターネット「石けん百科」などをご参照ください)。
・汚れが少ない場合など、石けんを使わず、お湯だけできれいになる場合もあります。石けんは、必ず使わなければならないものではないことにもご留意ください。
・石けんシャンプーの後は、専用リンスを使用するか、または、食用酢をお湯でうすめるとリンスの代わりになります。
③調理器具・食器等について
・鍋はステンレス、ほうろう引、土鍋、鉄がよいでしょう。
※アルミ製、フッ素・テフロン加工は避けましょう。
・調理器具はステンレス製のものがよいでしょう。プラスチック製のものは避けてください。
・食器・保存容器はガラス・ほうろう引・陶器などで、なるべく絵柄・着色がないものにしましょう。
・ラップ類は塩化ビニル製は避け、ポリエチレン製で添加物のないものにしましょう。
※それでも、熱い物や油・酢のものを直接ラップで包むのは避けたほうがよいでしょう。
④生理用品について
・一般の生理用品の使用により皮膚症状等がある方は、オーガニックコットンのナプキンが良い場合があります。

(8)食品の包装・容器
 以下のものは有害な成分が食品に付着したり溶け出している恐れがあるため、避けたほうが良いでしょう。
①発泡スチロールやダンボールに直接入っているもの。
・どちらも形がある限り化学物質を揮発させています。
②一般の缶詰。
・金属の内側に薬剤がコーティングされている場合があります。
③カップ麺のポリスチレン製の容器や、ポリカーボネート製の食器や容器、アルミ製の缶飲料等、塩素系の食品用ラップも避けてください。

3)体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する
(1)身体の新陳代謝を促進し、汗をかく
①身体の状態や体力に合わせ、できる範囲で運動を行いましょう。
・化学物質は体脂肪に蓄積されるため、体脂肪を減らし汗をかくことで一緒に体外に排出されます。
・空気の良いところで、ゆっくりと歩くだけでも効果があります。体力がついてきたら運動する時間や強度を徐々に高め、自分に合った適度な運動を続けることが望ましいです。少しきついくらいの強さで有酸素運動(付録参照)を約20分以上続けると体脂肪の燃焼が促進され、週3回程度は行うと効果的だと言われています。発症すると自律神経だけではなく免疫機能や内分泌機能のバランスも崩れやすくなりますが、体力をつけることで、身体の様々な機能が向上し回復に寄与します。また、気分転換により精神面への効果もあります。
②入浴(浄水で)・天然温泉(塩素が入っているところは避ける)・低温サウナで汗をかくようにしてください。

(2)有害物質の排出・解毒のためにビタミン・ミネラルをバランスよくとる
①栄養のバランスのとれた食事をとりましょう。
・特に緑黄色野菜を意識してとるようにしてください。
②必要な場合は、ビタミン・ミネラルを食品添加物が含まれていないサプリメントで補いましょう。
・化学物質過敏症を発症した方は有害物質の排出・解毒のためにビタミン・ミネラルを使い果たし、不足していることが多いと言われています。
※詳しくは専門医に相談してください。

4)規則正しくストレスの少ない生活により身体機能を改善する。
 これまで主に化学物質による身体への負荷(ストレス)を減らす必要性を書いてきましたが、化学物質だけでなく、カビやダニなどの生物的ストレス、電磁波などの物理的ストレスや、精神的ストレスも症状を悪化させることがあります。
(1)規則正しい生活をするよう心がける
 生活リズムが乱れると自律神経(付録参照)の機能に影響を及ぼします。夜更かし等をしないようにしましょう。
 睡眠のサイクルを調節し免疫力を高めるホルモンのメラトニンは、暗い場所で脳から分泌されますので、夜は部屋を暗くして寝ましょう。
(2)生物的ストレスの除去
 化学物質を使わずに掃除し、また湿気にも注意してカビ、ダニなどを防いでください。
(3)電磁波をできるだけ避ける
 電磁波(付録参照)の発生源のすぐ近くに長時間滞在せず、使用時間は短くするようにしましょう。
①家庭内では、電磁波が強いと言われている電子レンジ、携帯電話、テレビ、パソコン等の使用に注意しましょう。
②蛍光灯は、白熱灯に替えましょう。
・特に頭の近くで使う電気スタンドなど。
(4)精神的ストレスを軽減する
 適度な趣味、遊びや嗜好品などにより、上手に気分転換をしましょう